近すぎて、近すぎて見えなかったんだ。

近すぎて、近すぎて気付けなかったんだ。








悲しみピエロ







彼女を初めて見たのは、高校になって初めての6月だった。





都立高校の受験に失敗して、女子高に行ったあたしは中々クラスに馴染むことが出来なかった。
周りが女の子だけの集団というのは初めてで、あたしはどうしていいのか判らなかったのだ。
探り合い、馴れ合い、嘘ばかり……。非道く、居心地が悪かった。


そんな中で思い出すのは、幼馴染のこと。


ずっとずっと幼い頃から、どんな時にも隣にいた彼が、今此処にはいないって思うと何だか不思議
な感じがした。
うまく表現できないけど、なんか違う。なんか変なのだ。あたしがあたしじゃない感じ。




もカラオケ行かない?」

「ごめんっ!今日は用事があるんだ」

「そっか、じゃあまた今度ね」




特別な用事なんて何もなかったけど、今日は彼女達と楽しく笑って過ごせる自信がなかった。
何だか、心がもやもやしてる。
早く、一護に会いたいと思った。会って、話をして、笑いたいと思った。
またねー、と笑顔で手を振って、あたしは素早く上履きを履き替え、校門を出る。
校庭では野球部が、大きい声を出しながら、肩慣らしのキャッチボールを始めていた。















01.君がいた日常

離れてみて初めて気付いた、君がいない異常。



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(070613)


photo by 塵抹