嗚呼、今日も
あたしの想いは華々しく散った。





one-sided love






当たって砕けろ。駄目元でやってみろ。
口ではなんとでも言えるけど、何十回も挑戦してもやっぱり駄目なものは駄目で。
いくらへこたれない自信のあるあたしでも、毎回きちんと傷ついて回を重ねる毎に深手を負う。





嗚呼、やっぱりあたしじゃ駄目なんだ。






冗談っぽく想いを伝えたり、真剣に想いをぶつけたり。いつだってどれだってあたしは本気で。
なのに土方さんは、ちっともこっちを見てくれやしないんだ。
彼の心ん中にはミツバさんがいるのぐらい知っている。土方さんは好きとかそんなんじゃないっ
て言い張るけど、あたしをあまり見くびらないで欲しい。小さな頃からずっと土方さんだけを見
てきたんだもの。

・・・悔しいけどあたしだってミツバさんは大好きだ。美人だし、優しいし、いい女だよ。





でもさ、遠くの遠くのお星様になっちゃった人をずっと思い続けるなんてナンセンスじゃない?





いつまでも子供だと思ってたら大間違いだし、あたしはこれからどんどんいい女になる(予定だ
し)。過去の女より、未来がある女の方が絶対いいもん。そんなことに気付かない土方さんなん
て、ホント馬鹿よ。それを近藤さんに云うと、“じゃあ、はトシが死んだら違う男に 乗り換え
るのか?”なーんて訊いてくるもんだから、あたしは言葉に詰まってしまった。





「・・土方さん以外の男なんて、考えられない。」





近藤さんの言葉を思い出し、呟いた言葉は屯所の裏手(あたしのお気に入りの場所)で春風に
乗って消えた。どんな形であれ、やっぱりフラれるのは辛くて・・。だからあたしはいつも土方さ
んに当たって砕けると、此処で泣く。タオルを顔に押し当てて、誰にも気付かれないように。



そしてまたいつもの様に笑うんだ。笑ってまたあの人の隣に行くんだ。




土方さんの前で泣くのは反則だから。優しい彼はきっとあたしに同情する。そんな風に土方さん
の心を手に入れたいとは思わない。それはあたしのちっぽけなプライド。






思いっきり鼻で息を吸うと、顔に当てた真っ白なタオルからは石鹸の匂いがした。
今日はいいお天気なのに、雲たちが御天道様を隠しててあたしの座り込んでる場所には光が届かない。




しばらくすると前方から、聞きなれた足音が近づいてきて。


の癖にさぼりなんざ、いい度胸でさァ。」


顔にへばり付けたタオルを無理矢理引き剥がされて、その足音がやはり総悟のそれだと確信を持つのに、そう時間はかからなかった。






「・・・残念でしたぁー。今日は非番の日だもん。総悟と一緒にしないで。」
「生意気言うのはこの口かィ?」
「いーひゃぁいー。(いーたーいー)」
「御免なさいは?」
「・・ごめんなひゃい。」





総悟はいきなりあたしの頬っぺたを左右に思いっきり引っ張って、妖艶な笑みを浮かべた。
瞳が潤ん で真っ赤になっている女の子にやる仕打ちじゃない。





の泣き顔はどんな不細工な女神よりも綺麗だぜィ。」

「意味わかんないし、褒め言葉じゃないし・・。」





ドスンとあたしの隣に座り込み、あたしから取り上げたタオルを丸めて空に投げる。


も懲りねェやつでさァ。」


空を舞ったタオルはすんなりと総悟の手中に収まった。


「何しに来たのよ。」
「決まってるだろィ、からかいに。」
「性格悪いなーホント。」




総悟は何度も同じ行為を繰り返している。
投げては、掴み。投げては、掴み。

そんな総悟を横目にしてから、あたしは空へと視線を移した。





「ねぇ、どうすれば、こっち向いてくれるのかなぁ。」





今日は少し雲の流れが、速い。








「一生無理でさァ。」







雲の切れ間から隠れていた御天道様が顔を覗かせた。
眩しくてあたしは、目を細めた。









「だから、俺にしとけや。」









横を向くと、総悟の綺麗な瞳。ミルクティー色の髪の毛が春のゆったりとした風に揺らされていた。






「・・・ごめん。」






そうあたしが言った後で、総悟はあたしの髪に手を伸ばしクシャクシャとかき混ぜながら、“何
真剣に応えてるんでィ”と云って笑った。その笑顔はいつものあの何か悪いことを企ててるよう
な腹立つスマイルだったけど。あたしはその顔になる前に一瞬だけ非道く苦しそうな表情をした
総悟を見逃さなかった。心がぎゅっーと、痛くなった。






「ホントには不器用でさァ。」



ねぇ総悟。もしあたしが器用な女なら、とっくに土方さんを諦めて甘えているわ、総悟の優しさに。
(総悟の其れはとても解りづらいものなんだけど)




「・・・総悟もね。」




もし総悟が器用な男なら、とっくに、もっと強引にあたしの心を奪ってくれてるはずだよね。








「「それに、土方さんも。」」


二人の声が重なって
あたし達は顔を見合わせてケラケラ笑った。










「あの人が一番不器用な人だよね。」
「そして悪の根源でさァ。」
「ほーんと、マヨネーズ野郎の所為であたしの青春ずたぼろだよ。」
「俺がこれからもっとずたぼろにしてやりまさァ。」









不器用なあたし達は、不器用な恋の仕方しか知らなくて。

きっとあたし達の物語に名前を付けるとしたら・・・、



“僕らはいつも片思い”



そんな題がぴったりだな、と思って

総悟と二人、春の青空を見上げながら笑ってやった。





明日もまた強く逞しく不器用に、


そう生きられるように、笑い飛ばしてやったんだ。






見上げた空の御天道様がとても、眩しかった。


































(土方夢・・?総悟夢;;?すみません、ただなんかこうゆうの書きたかったんです。   20070420)