ドラマの結末はまだまだ遠い。
「ー。ー。」
「ごめん、ちょっと黙ってて。」
「・・・・。」
おあずけ
今、あたしの中では空前の恋愛ドラマブームだ。
現世任務の同僚に頼みこんでビデオに録画してもらって。
仕事から帰ってきて、これを見るのがすっごい楽しみ。
だって、続きが気になるんだもん。
だけど修兵はそんなあたしが気に入らないみたい。
駄々をこねたり、無理矢理テレビを消したり。いつも邪魔ばっかり。
そんな所為でちっとも続きが見れなかった。
今日こそは、きちんと見てやるんだから。
「、そんなん見てねぇでこっち来いよ。」
「んー、一時間だけ待って!」
修兵が呼びかけたって気のない返事で。
あたしは床に正座をし、テレビの前を陣取って夢中になって見ていた。
「そんなに面白れぇか?これ?」
あたしの後ろに回りこんでテレビを覗き込む修兵。
「うん。」
あたしは短く返事をし、修兵を見向きもせずにテレビに噛付いていた。
“ふーん。”と言いながらあたしの後ろに座り込み、修兵は後ろからあたしを抱きかかえる。
「こいつより、俺の方がカッコイイだろ。」
「・・ちょっと、いいところなんだから邪魔しないで。」
「へいへい。」
今日の修兵は珍しく素直。
いつもだったらここで“こっち向け。”だの“テレビ消せ。”だの言い出すのに。
何も言わずに黙ってる。
あたしにがっちり巻きついた修兵の腕と足が少し邪魔だけど。
どうゆう風の吹き回し・・?
でも今日こそはちゃんと見れそう。
大人しい修兵に少し疑問を持ちつつも、あたしは集中してドラマを見ていた。
なにしろ主人公が格好良くて。
ヒロインも可愛くって。
二人が離れ離れになって、切ないよ。
「・・・・ひゃっ!」
修兵の腕や足が気にならないくらいお話にのめり込んだ頃、右耳に生ぬるい感触を感じた。
「ちょっと修兵!邪魔し・・」
「CM中、だろ?」
修兵のいう通りちょうどCMに差し掛かった所。
喉の奥でククっと笑ってあたしの耳を舐めたり、甘噛みしたりする。
「・・んっ。・・・んんっ・・しゅうへい、ちょ・・っと、やめ・・。」
あたしの反応に気を良くしたのか、耳から首筋へといく修兵の口唇。
修兵の所為で耳元からどんどん熱が篭ってきて。
我慢、我慢と思いつつも・・。
あたしは欲望に勝てぬまま、修兵の口唇を求めて後ろを向いた。
「何だ、?欲情しちゃったか?」
熱の篭った目で修兵を見ると、勝ち誇ったような顔。
「・・・ばか。」
・・・してやられたり。
体はもうドラマよりも修兵を求めていて。
素直に負けを認めて、キスをせがむ。
修兵の顔が近づく。
ぼーっとする頭の片隅で“今日もドラマ最後まで見れなかったなぁ”なんて軽く後悔しながらも、あたしは自分の欲望に身を任せた。
「おっと!!」
修兵の口唇まであと2センチってところで顔を押し戻される。
「・・・?」
きょとんとあたしがしていると、修兵はにこっと笑ってこう言った。
「CM終わったぜ。」
「えっ、あっ・・。」
「ほらっ。、ドラマ見ろよ。」
くるっと体をテレビの方に向かされて。
あたし達は元の体勢。
急におあずけをくらったあたしは、修兵に火照らされた体の所為で頭が真っ白で。
案の定その後のドラマのお話なんか全然頭に入らない。
「・・変態。」
「もな。」
勝ち誇った声が許せない・・。
また今日も修兵の意地悪で、ドラマの結末は遠いのです。
***************
修兵は女の人の扱いがうまそうです。
ここまでお付き合い下さってありがとうございました。2007年1月10日。
photo by 七ツ森