お昼時の商店街は、ほとんど人がいなくてがらんとしていた。
八百屋の前ではネコがのんびり欠伸をしてて、煙草屋のお祖母ちゃんはニコニコとラジオを聴
きながらお饅頭を頬張る。

そんな中を、暑いわ〜死ぬ〜と文句を垂れながら歩く真子の背中を見つめながら、私は歩いていた。
なんだか平和だなぁ、と不意に感じて私の頬は自然に緩んだ。

夏が、すぐそこまで来ている。

現に私のワイシャツは春の強い日差しに照らされて、背中はじわりと汗を掻いていた。
でも不快には思わない。あたしは春が終わりを告げて、夏がやってくるこの時期が大好きだ。





「ねぇ、真子。」


「んあ?」



すごく幸せな気分だったから、唐突に言ってみたくなった。

私の方へ振り向いた真子に向かって“好き”の二文字を大きくはっきり発音する。
真子はぽかんと口を開けてしばらく私を見つめた後に、ゆっくりと体を少し右に傾けた。
金色の綺麗な髪の毛がサラっと揺れて、それからすぐに私の期待してたものとは全く違った台詞
が真子の口から零れた。






「何、企んどるんや?」

「……は?」

「今、金無いで?」

「サイテー。」






ああ、私がバカだった。
真子も、オレもやで、とか笑顔で言ってくれる、そんな少し素敵な展開を期待した私がバカだった。

何で私に最低と言われたのか意味が分からないという顔をして、何か買うて欲しいんとちゃうの?
と頭を掻きながら面倒臭そうに真子は私に尋ねた。
私は真子を睨み付けて、違うよバカッと呟いてから、ずかずかと奴の右側を通り抜け、真子を置い
て歩き始める。







「ちょ、待てや。冗談やって。」





後ろからがしっと腕を掴まれて。





「一回しか言わんから、耳の穴掻っ穿ってよー聞け。」






振り向くと、大好きな真子の顔と大好きな春の太陽。






「オレも、お前が好きやで。」






眩しくて、暑くて、幸せで

私は何だかとろけてしまいそうだった。








「なんか真子、気持ち悪い。」





私は照れ隠しにそう言って、意地悪そうに笑ってやった。

何やねん、しらけるわァ人がせっかく言ってやったのに…そんなことをブツブツ言いながら先に歩
き始めてしまった真子の隣に滑り込み、腕を組む。




「暑いねん。ひっつくな。」

「いいじゃん、減るもんじゃないんだしー。」



あ゛〜暑いわ〜、とだるそうに歩く真子の横にぴったりとくっついて歩き出す。

ちょうど下校時間なのか、前から小学生の男の子たちが楽しそうにやって来る。
ケラケラと笑う男の子たちに負けないくらい、私も笑った。

また来年も再来年も大好きなこの時期に大好きな真子と一緒にこうやって歩きたい。







それが私達にとっては、きっと平凡だけど一番の幸せの在り方。






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